最近私の所へ結構この手の問い合わせが多いので、あえてページを設けます。
いいえ、けっして難しくはありません。
では、なぜ巷ではそのような話になっているのでしょうか。
それは、国産のカメラとはちょっと構造が違うためだけではなく、見た目が国産のカメラと違うのでこの機械は特殊なんだと思い込むためです。でもそれを言ったらエキザクタや、コンタレックス、プラクチカ、ハッセルブラッド、フォクトレンダービテッサ、ローライ35、ボルシーやロボット等はてはライカまですべて難しいということになってしまいます。
私から言わせれば、国産の一眼レフよりもシンプルで、非常に合理的にまとめてありますし、部品も大きくて、どのように動作をしていくのか読み取るのも楽な機械だと思っております。国産の複雑な動きをするカメラを修理できて、なぜ修理できないのか。おそらく修理業者自体が国産メーカーの修理部門を退職後独立、又は修理会社に就職。そのため今まで修理していた自社のカメラは修理できても、他社のカメラは解らないし修理に時間のかかるリスクは負いたくないと言うのが本音ではと思います。又修理代が・・・・・・・・とは、ビックリするどころか呆れてしまいます。
それから神話。もっともらしく聞こえるでしょうが「アルパは、精密機械。時計の部品メーカーが作った物だから、修理は時計の修理を出来る人で無いと出来ません」。誰がこんなことを言い出したのかは知りませんが、これは物のわからない、又、中を見たことの無い、他人から又聞きしたことを鵜呑みにした人の言うことでしょう。アルパは時計では有りません。れっきとしたカメラです。時計に、フォーカルプレンシャッターは付いておりますでしょうか。当然、時計の修理屋さんでは無理でしょう。しかも時計らしきところと言えば、国産のメーカーより大きな、がっちりしていて単純な作りのスローガバナーとセルフタイマー位の物です。これはどこのカメラメーカーでも付けているでしょう。しかも、精密機械。カメラはすべてどこのメーカーの物でも精密機械ではないのでしょうか。私は、"写るんです"であっても精密機械だと思っていますが皆さんはいかがでしょうか。しかも、現在のカメラメーカーのNC工作機械では千分の十ミリと言う加工精度 ( キャノンF1等 ) でカメラやレンズが作られています。ほとんど手作りに近い作り方をしていたら、ここまでの精度を出せていたか疑問です。しかもすでに我々が入手している時点で、どこかいじられている機械がほんんどですし、よくカメラ雑誌などに掲載されておりますが、35ミリカメラのピントのボケは30分の1ミリの許容錯乱円という言葉を思い出してみてください。ICやCPUを焼き付ける機械に比べれば言わずもがなです。私から言わせればAやCやOやNやMやKやFやRのほうが量産精密度は上でしょうし、ミノックスも忘れていませんかとなってしまいます。まあそれだけアルパに惚れ込んでいるから上記のことを言い出す人も出てくるのでしょうが、度を越し過ぎて業者に踊らされているなと、滑稽に聞こえるのは私だけでしょうか。実際そういうことを平気で言うカメラ店や修理業者も居るようですし。修理代も高く設定できる・・・・?。
それでは分解写真を少しだけ載せて簡単な解説と分解手順をどうぞ。
これは5C アルネアです | これは7C アルネアです |
私は必ず巻き上げ部分からトライすることにしています(これがはずせなければ、軍艦部は普通はずせませんから)が、別に巻き戻し側からでも構いません。5Cこの部分のかに目は正ねじです。ここでは、カニ目さえはずせばダイヤルは上に引き抜けます。決してその奥のマイナスねじははずさないことです。さしあたり分解していく上で必要のないものは、絶対にはずしてはいけません。これは鉄則です。そして必ずダイヤル指標の位置やスピード表示等のマーキングかメモをとることを忘れないでください。7C巻き上げレバー上のマイナスねじは逆ねじです。これを外すと3本のマイナスねじで止まった蓋があります。この蓋の下に巻き上げレバーのリターンスプリングが隠れています。不用意に外すとスプリンクがはじけますが、原理がわかれば組み立てるときに、この蓋の内側にスプリングを巻いて組み込んでから蓋をすれば良いだけですが・・・・。スプリングの片側は中心の軸の溝へ。もう片方は蓋の裏の突起に引っかかるように。 |
次に巻き戻し側ですが、裏蓋をはずします。フィルムパトローネ室の上部を見てください。黒く見える巻き戻し軸の両側部分にマイナスねじが二本見えます。この二本をはずします。これは巻き戻し軸固定ナットの目くら蓋の固定と軍艦部の固定とを兼用しています。ねじが取れれば目くら蓋と黒く塗装してある漏光防止用に外枠に被せるように入っている薄い真鋳の板をはずします。ナットをはずせば巻き戻し軸は、軸ごと簡単に取れますし、巻き戻し側のねじが正だ逆だと考える必要はありません。巻上げ側の軍艦部にある二本の銀色のねじをはずし軍艦部を上に持ち上げれば、ペンタプリズムごと軍艦部が取り外せます。次に作業の途中で曲げたり折ったりするといけませんのでレンジファインダー部分の遮光板(ねじ一本で固定されている)も外してしまいます。いかがでしょう。これで上部のメカ部分とピント板が出てきました。でも、すぐに次の工程に進む前にピント板の周囲を見てください。芋ねじ3本これはピント調整用ですので、次の作業に行くと動いてしまう恐れがあります。マニキュアかセメダインCで軽く固定しましょう。ちなみに、真中のねじはピント板の後ろ側。左右のねじはピント板の前側の位置を上下させるものです。それから、ピント板を抑えているスプリングの向きと形。下から持ち上げている、芋ねじで前後する金具の向きと形がどのように入っているかを忘れずにメモしてください。最近この部分がいじられているものが結構有ります。雑誌の悪影響でしょうか。某カメラ雑誌に数年前アルパのピント板の交換記事が掲載されました。これでチャレンジした方が結構いらしたようで、ここの部品の組みつけがいいかげんだったり、スプリングを飛ばしてしまい片側だけで押さえてあったり、針金で部品の代用をさせていたりと、結構いいかげんなものが見受けられます。せめて同じ太さのピアノ線を買ってきて同じように加工してあげれば・・・・・。なを、ピアノ線は、模型店に行けば各種太さのものを購入できます。 |
大きい歯車部分を真上から見てください。歯車の隙間から奥の方になにやらレバー状の歯車と同じ色をした金属が見えるはずです。これがスローガバナーのチャージをするための連結レバーです。先ほど外した巻上げダイヤル兼シャッタースピードダイヤル。これはスピードの表示板も含めると三段重ねになっています(カニ目も入れれば四段)。この一番下の部品から長いピンが出ています。このピンとレバーがぶつかるところがバルブの位置です。5CではBではなくPと表記されている部分です。そのまま時計方向に回していけば2分の一秒、一秒などとチャージ量に応じてセットされます。大きい歯車部分を真上から見てください。歯車の隙間から奥の方になにやらレバー状の歯車と同じ色をした金属が見えるはずです。これがスローガバナーのチャージをするための連結レバーです。先ほど外した巻上げダイヤル兼シャッタースピードダイヤル。これはスピードの表示板も含めると三段重ねになっています(カニ目も入れれば四段)。この一番下の部品から長いピンが出ています。このピンとレバーがぶつかるところがバルブの位置です。5CではBではなくPと表記されている部分です。そのまま時計方向に回していけば2分の一秒、一秒などとチャージ量に応じてセットされます。 |
では、さらに分解していきましょう。本体の底部にねじ一本でとまっている目くら蓋があります。ねじを外して蓋を開けましょう。ここはフォーカルプレンシャッターのテンションの調整をするための窓です。次にパトローネ室を見てください。左右に各二本マイナスねじがあります。これをはずせばフイルム室を形作っている薄板が外せます。巻き上げ側のスプロケットギヤとフイルム巻き取り軸も各ねじ二本づつで、板状の部品で留めてあるだけですので、この板状の部品を外せば下に引き抜けます。但しスプロケットギヤ部は機種によってはボールベアリングが入っているものも有りますので、この場合は、ベアリングを落とさないようにご注意ください。フイルム巻き取り軸を外すと奥の方にマイナスねじで留められた歯車が見えます。これは正ねじですので、反時計方向に回して外してしまいます。カメラを後ろから見て右肩銀色部に銀色のねじが。さらにその下、黒く塗装された部分に黒いねじがあります。この二本も外します。それから、裏蓋の入る溝の部分も見てください。機種によってはこの部分にも漏光防止の薄い真鋳製の部品が入っているものがあります。つぎに大きい歯車の乗っている真鋳製の台座を見てください。頭の膨らんだねじが台座の左右、ボディ後ろ側に一本づつ有ります。このねじも外します。台座からは、差当りそれ以上ねじを外してはいけません。カメラの前ボディ側まで外してこの台座を外す必要はありませんから・・・・。それを外して大仕事を自分で作ってしまった人もかなりいるようです。後は後ろ側ボディーのフィルムゲートの上下左右にある、四本の頭の黒いビスを外せば写真のように前後に二分割できます。この時ゆっくりとピント板の周囲を確認しながら開ければ、スプリングの入る穴や金具の入り方を確認できますので、メモを忘れずにしてください。又このスプリングはけっこう太目のピアノ線のようです。組み込む時かなりの力が必要です。少し大きめのしっかりしたラジオペンチがあると他の部品に傷をつけずに又、飛ばさずにすみます。 |
内部を見ていかがでしょう。シンプルでしょう。しかもこれが時計でしょうか。ここまで開ければフォーカル幕の張替えもできますね。この機械、修理業者の所に二年間ほど遊びに行き催促してやっと戻ってきたが不調と言うことでしたが、流石に内部の鉄の部品のさびかたが凄いのがお判りでしょう。中央に大きく見えているスイッチのようなものは内部のシンクロ接点です。そして、この機械は、スローガバナーのバネが弾けているのが判りますね。この弾けたばねが他の部品にぶつかり、すべての動作不良の原因になっています。では、どうしましょう。そうですスローガバナーをはずして修理をしなくてはなりません。そして、ばねが弾けている原因です。スローガバナーは上からねじ三本で真鋳の台座の裏側に固定されています。まず右肩部分に銀色のねじが二本並んでいます。そして、もう一本はどこ?、見つける方法は。シャッターボタンを何回か押して真鋳の台座の上の部品の動きを見てください。細長い板状の部品で真中が楕円状に抜かれた物が左右に動きますね。シャッターボタンを一番押し込んだときにこの楕円状の穴の隙間から見えるねじが三本目です。周りの部品を外してからでもよいのですが、そのためには、各種部品を止めている割ピンを外さなくてはなりません。当然、後で組み立てるときこの割ピンは折れて使えなくなります。邪道ですが、この楕円の穴より少し小さめのマイナスドライバーで傷をつけないようにまわせば、スローユニットは簡単に取れてきます。この弾けたばねは反時計方向に中心から外側に向けて巻いてあります。しかも大きく見て部品は三点です。組んであるねじを外せば簡単に分解できますが、一番大きな部品つまりバネが巻き付いている下の歯車部分は二重構造になっていて、中にボールベアリングが二個入っておりクラッチの働きをさせています。この機械は何らかの原因でバネが抜けてきていましたので、抜けにくいようにばねの根元を小さく三つ折にして本来入っていたところに押し込みチャージ状態にしてそのまま組むとテンションで又戻ってしまうためチャージ後バネが戻らないように爪楊枝を挟んで噛ませてから元の位置にそっと戻し三本のねじを締めてから爪楊枝を抜き、シャッターの動作テストを行います。せっかくここまで開けたのですから各稼動部への注油も忘れずに行いましょう。OKなら逆の手順で組み立てて行きますが、組み立てながら、光学系の清掃も忘れずに行ってください。レンジファインダー、ペンタプリズム、ピントルーペ、ピント板、及びコンデンサーレンズ、ミラー、それからピントのチェック、各種動作のチェック、そしてシャッタースピードの調整です。が、決してシヤッター幕のテンションは掛け過ぎないようにしてください。幕やリボン切れとなり、張り替えをしなければならなくなってしまいます。これはアルパに限らずすべてのフォーカルプレンシャッター搭載機に言える事です。 |
余談ですが、10Dには露出計の電源スイッチが付いていますね。でも中を開けてみて何故こんな面倒なやり方をしたのか不思議でしょうが有りません。恐らくどこかの会社の特許を逃れるためにこんなことをしたと思うのですが。構造的には当初シヤッターボタンの反押しで露出計のスイッチが入るように設計されていたのではないかと思います。大きい歯車の上にわざわざ電気の切片が常に接触するようにねじで止めてありますが、この位置をずらしてシャッターボタン反押しで切片が歯車の上部と接触するようにしてあげれば電源スイッチは常にオンの状態でも構いません。私はそのほうが使いやすいし、スイッチの切り忘れも関係なくなりますので、上記のように、シャッターボタンの反押しで露出計が働くよう手を加えて使用しています。10Dをお持ちの方はぜひお試しください。